(塾だよりから転載。一部学校名はイニシャル表示に変更してあります)
またまた学校に喧嘩を売る内容になりそうな気がしますが、気にせずに書いていきます。
来年度入学希望者向けのM高校のパンフレットが学校のウエブサイトにあったので見てみました。最初のページに大きく書いてあるのは『勉学に部活動に気力を!』という体育館の外壁に掲示してある言葉です(昔は部活動ではなく体育だったのですが)。M高校に限らず最近聞くことが多いのが『文武両道』の言葉です。「勉強も部活動もがんばりましょう!」ということですがこれってどうなのでしょう?
昔話を語らせてください。
私は43年前の1979年にU高校に入学しました。当時のU高校は普通科・理数科と商業科がまるで別の学校であるかのようで(おそらく旧制U中学出身者と旧制U商業出身者の確執のようなものが尾を引いていたのではないかと想像します。U市出身の父もそのように言っていましたので)、校舎は別校舎、体育祭の団体も別、制服の襟章も別、その上修学旅行ですら別日程でした。
文武の面においては普通科・理数科は『文』を担当するから商業科の皆さんは『武』担当をお願いします、ともに頑張りましょう!といった感じでした。先生方もそう思っていたようで、運動部に入っていた普通科・理数科の生徒にはあからさまに「いつ辞めるの?」と言っていた先生までおられました。
こんなこと書くと当時のU高校が大学進学に関してスパルタ教育だったと思われそうですが、実際は宿題もほとんどないような放任主義でした。ただし「君らはやらなければならないってことは知ってるのだから、押し付けの指導はしない。各自自分の目標に向けてやるべきことはやれよ。私達は最大限のフォローをするから安心して勉学に励みなさい」というものでした。そのおかげで私達はのびのびと勉強ができ、今になって考えると本当に良い先生方に恵まれたと思います。
商業科の面々ものびのびと部活動に励んでいた印象がありますね。やんちゃな生徒も少なからずいましたが…。
文武両道は理想です。愛媛県の高校教育関係者の方々はその理想を追い求めることに懸命で現実が見えてないと感じますね。県立高校は軒並み進学実績を落としてますから。
実際には最近のトレンドは『文武別道』です。一つは学校全体を見ると文武両道ですが『文』と『武』の担当者が別になっているものです。県内でいうと済美高校あたりのやり方がこれに該当するでしょう。スポーツ専門クラスと大学特進クラスを完全に分けてるような。
もう一つの文武両道のあり方としてよく取り上げられるのが慶應義塾高校や早稲田大学高等学院をはじめとする大学付属校です。世間的には『エスカレーター校』と呼ばれているように、それなりの成績を修めていればほぼ無試験で大学に入学できる高校です。この環境だと文武両道も可能でしょう。
先ほど県立高校の進学実績について触れましたが、私の時代と比較すると少子化で全国的に生徒数が減ってます。大学の入学定員はというと、これは増えてます。となると例えば東京大学の合格者数が増えるのが当たり前なのですが…現実は減り続けています。東大に進学するのが良いことだとはいいませんが、今の現実の一つの指標にはなるでしょう。
私なりの結論を申し上げると、文武両道はU高校だと文武の担当者を分けることで可能かもしれませんが今のM高校の規模では到底無理です。
こんな事を言うとおそらく反対意見も多いかと思います。「〇〇くんは立派に両立してたじゃないか」とか「今の大学入試には総合型選抜や学校推薦型選抜だってあるのだから」と言われるかもしれません。これについては次回の塾だよりで触れたいと思います。